真田ピロシキ

キングダム2 遥かなる大地への真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.9
トーンタンタン。素晴らしい羌カイの再現度。舞い、そして大群を切り刻む軽やかな無双のリズム感。それが信のジャンプして敵陣をぶち破る力任せの無双と合わさってアクションの楽しさを増す。

前作はクォリティの高い実写化であったもののほぼ原作をトレースした内容でそこに『るろうに剣心』と比べると物足りなさを覚えていたのだが、本作は政暗殺未遂を冒頭に持ってきた上に大幅カットして、羌カイの話は舵甘平原内でオリジナルエピソードを交えながら描き切る再構築が試みられていて実写映画としてのキングダム世界が確立されつつある。暗殺編を削ったのは本当に英断で、物語のステージは戦場における将としての視点に移っているのに今更少年ジャンプ的な個々のバトルをやるのはナンセンス。実写版では前作で左慈が良い仕事をし過ぎてただけに余計に不要。これでキャラクターを脇役までほとんど削ってないのが原作ファンなら嬉しいところで、また連載時にはなかった呉慶の魏火龍設定を口に出すように知ってる人ならニヤリと出来るポイントも抑えられてて好印象。原作者が脚本に参加した意味がある。

マイナスポイントは泥臭い戦場なのに血すらろくに出ないアニメ以上に生ぬるすぎる表現。そこはもっと頑張れ。見せられないなら見せられないでそう思わせないとダメでしょう。それとあまりに回想シーンが多く、前作の回想に加えて今作で流したばかりのシーンも度々再利用されてダルい。これは客の理解力を侮っている日本映画の悪いところよ。ただでさえ原作同様に戦況の説明台詞とかもあるのに更にこんなのが加わると。

しかし全体的には満足です。羌カイの女バレも引っ張る必要はないと早々に信以外の後の飛信隊にも明かしてて、ただ漫画を忠実に再現しようとした映画との訣別が見てとれる。大体この羌カイが髪隠しただけで男と偽るのは無理がある。そうなると信がガキ呼ばわりされてるのも違和感があるけれど、そこは大河ドラマみたいなものと思うしかない。前作で特に言及されなかった貂が男のフリをしている設定には本作でも触れられなかったのは、これはもう最初から普通に女として生きているということなのか。どう見ても男には見えんしね。しかしそれだと妹みたいな認識だとしても信と同じ小屋に住んでるのはどうなんだという話なのですが、あの見た目で小学生くらいの歳なのかもしれない。あまり深く考えてはいけない。

出演者はイメージの湧かなかったトヨエツのヒョウ公将軍はそこまでイカれた感じはしないものの荒々しさはあって悪くない。火がついた。突撃じゃあ!相変わらず素敵な大沢たかおの王騎将軍を都合を無視して酒に誘うシーンはベテラン俳優同士だけあってなんてことはないシーンなのにどこか趣深い。それと澤伍長が『カメラを止めるな』の日暮監督なのが私的注目点で、頼りないけどやる時はやれる人感を演出されてて良い。

次回作で物語は一区切りがつくのでこのまま勢いを継続してほしいところ。エンドロール後に膨れ上がらせられる期待。次なる『るろうに剣心』になれるか。