夜ノ砂

キングダム2 遥かなる大地への夜ノ砂のレビュー・感想・評価

4.0
騙し合いなどの複雑な人間関係は控えめで、映し出される古代中国っぽい景色は前作と比べて種類が少ないが、そういったことを気にさせない壮大なスケールと迫力、人間ドラマ込みの展開と演技で魅せる歴史アクションドラマに仕上がっていて、前作同様見応え十分。観終わったらいい感じ疲労感。

「本当に万単位の人間がいるんじゃないか」「どうやって撮ったんだ?」
なんと言っても蛇甘平原の広大さ。そこに展開される魏軍の大隊列の規模のデカさ。
前作同様のスケール感にまず圧倒される。

ぶつかり合う大勢の歩兵、突進してくる騎兵、そして馬車まで。己の剣で敵をなぎ倒す!。高くジャンプする描写もあるけど身体能力の高さとしてのリアリティに収まる範囲だ。

戦闘シーンの迫力と臨場感は普通に大作映画そのもので興奮の連続。乗馬の立ち回りはもう圧巻。ものすごい数の兵士エキストラの中、山崎賢人がスタントなしで馬に乗って疾走しながら攻撃する。壊れる敵の馬車、ひっくり返る軍馬。

兵士が首を斬られて血が吹き飛んだり、(戦以外のシーンだが)生首も大写しになるなどリアルな状況を見せるもののグロくならないぎりぎりの演出とアングルは、「G(年齢制限なし)」で可能な限りリアルに魅せようとする作り手の意気込みに好感。

一歩兵として戦に参加した信の目線で描かれる最前線に終始ハラハラしきりだった。

また、謎のメンバー・羌瘣のドラマ、さらに将軍たちの生き様が描かれるそれぞれのドラマが戦という大きな流れの中にいい感じで絡み合ってきて心を掴まれる。

羌瘣の哀しい目の理由と参戦した目的が明らかにされる回想ドラマもありがちな悲劇パターンなのに引き込まれていくし、感情移入させられる。普遍性と独創性のバランスが絶妙な脚本の良さがあるけれども、何と言っても清野菜名が一人の孤独な少女の心情をうまいこと表現しているからだ。

そして改めて、信を演じる山崎賢人が良い。少年漫画的でわかりやすい主人公なのに信というキャラの魂が身体の隅々まで行き渡ったような賢人の演技によって、物語、状況に説得力が生まれている。
夜ノ砂

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