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あのこは貴族のmoneのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.5
東京の「棲み分け」や「格差」について。
東京という都市の多層性は本当に興味深い。エリアによっても歩いている人の感じやお店のラインナップが全く変わってくるし、本当に自分の所属する階級の平行線上で世界が成り立っている感じ。経済状況や社会的地位関係に人々を当て嵌めた時、所属する階層を跨いで、誰かと出会ったり知り合う機会は中々少ないように思われる。少なくとも私は普段生活していて、移動はタクシー、夜には高級ホテルのラウンジで過ごすような優雅な人達にこれまで会ったことがない。

この映画ではいわゆる上流階級でも上下関係が発生するというのが、ちょうど中の下?くらいにいる私にとってあまり馴染みのないものだったので勉強になった笑
見えないけど確かに存在する東京の階級社会において、作中の人物の中で最も息苦しさや辛さを感じていそうなのは青木幸一郎のように思われる。政治家一族という超上流階級の生まれであり、一番何不自由なさそうな彼だが、幼い頃から生き方を決められることに慣れすぎてしまっていること。自らの運命を受け入れてはいるものの、既に決められてしまった自分の人生に対して彼なりのやるせない諦めのようなものが垣間見える。この先の人生が見えすぎてしまっており、予定調和の生き方に虚しさを感じやすいという意味で、彼が実は最も「生まれ」に縛られた人生のように思われた。

またふと現れる花子と美紀の階級差の描写には目を逸らしたくなる瞬間があるほど生々しい。丁寧で繊細に、その「縦の人間関係」は作中に織り込まれていく。しかし、花子と美紀のように、生い立ちや経歴などだけに囚われず、辛い時に互いに寄り添える「横の人間関係」の在り方がとても素敵だった。彼等の連帯が美しい。
幸一郎とは対照的に、花子と美紀が自分の足で自分の人生を歩んでいく姿がひたすらに眩しい。
こんな人間関係を、個別化が進む東京で築くことははたして可能なのだろうか。
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