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あのこは貴族のNのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.8
この間仕事で東京ステーションホテルのラウンジへ行った。コーヒーが一杯2000円もして、そんな世界があるのだと衝撃を受けた。そこで優雅にお茶をしていた人々。(私はお茶せず)
この映画を観て、ふとその人々を思い出した。私はそこでお茶をする人達を一括りにし、自分との間に大きな壁や溝を感じていたけれど、実際その中には美樹のような人もいれば、華子のような人もいたのだろう。もちろんその2人じゃないような人も。

邂逅を丁寧に描き、かつ争いではなく交流としての柔らかい関係を描くところが心地よかった。
華子と美樹、その間にいる青木。争いしか生まなそうな状況だが、予想は裏切られ、静かで冷静な対話を描く。なんて上品な作品なんだ…と惚れ惚れした。

青木を一見特権溢れる立場のように見せつつ、影に隠れる足枷や、押し付けられる男性性。
華子と青木の対話はラストシーンで初めて生まれたのかもしれない。対等な目線。

晴れた日の爽やかな日差しもさることながら、やはり高層から見下ろす景色は曇りの方が美しい。
ロストイントランスレーションも然り。
窓から見える雲がかる街並みは異世界のお伽噺のようだ。
美樹が言う、いわゆる東京って場所好きなんだよね。という台詞とてもわかるな。
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