大道幸之丞

あのこは貴族の大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

結論から言うと楽しめました。

タイトルの「貴族」は今回榛原家と青木家の両良家の結婚が話しの軸になっているから。

ところで榛原華子(門脇麦)を監督の岨手由貴子は冒頭から決して美しく撮らない。「アラ探ししているのか」と思えるほど。門脇麦ファンなら不満になることだろう。しかし良家が揃う離婚の場での華子が突然美しい。

——これは世間体に流されるように結婚を欲し、自分を殺してまで青木幸一郎(高良健吾)に寄り添って行こうとするまでの華子をそう撮っておいて、初めて自分の意思を「離婚」という形で決心したときこそ美しく撮ったのだろうか。だとするとこの監督はただ者ではない。

対比される設定として時岡美紀(水原希子)のキャスティングは相応しい。そして平田里英(山下リオ)は現代の女性を表現できており、たとえ自らが良家などでなくとも、友情が人生において何にも代えがたいものであると感じさせてくれる。

相楽逸子(石橋静河)はもう堂々たる大女優っぷりを振りまいている。今回も凛とし自立した「はまり役」を得て存在感を出している。

同じ大学で皆が交錯しているストーリーもいいし貧しくとも「生き方」が自由に選べる事と、金持ちでも何かと制限を受けてしまう事が価値的に単純に比較できない事を見る側には伝える事に成功している。

——ただし、岨手監督は良家の家族に(例えば皇室のような)漂う固有の天上人たる「空気感」を終始作り出せないで終わっている。両家とも「それらしい」キャスティングでがん首を揃えてはいるが、俗っぽさが抜けず、どうにも嘘くさいのが残念だ。そこだけ取ると無残な失敗作と言える。しかしそこを一番腐心すべきだったのではないのだろうか。