サガン

あのこは貴族のサガンのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.0
◆階層の本質◆
ディープな取材に基づく原作のリアリティを岨手由貴子監督がきめ細かく上質に仕上げている
山内マリコ×岨手由貴子×門脇麦×水原希子の女性タッグが絶妙なケミストリーを醸した

代々開業医の家系で松濤育ちの華子
東京をサバイヴする上京組の美紀
接点のない異階層の2人の人生がひとりの男を介して交錯する
出逢ったことで鮮明になるのはそれぞれの違いだけでなく、彼女たちにまとわり付く同じような息苦しさ・閉塞感だった

ディテールへのこだわりが作品の完成度を高めていた
華子の少し野暮ったいけど明らかに上質な身なりやカトラリーを落とせば躊躇なく上がる右手や。
美紀の実家の風景や爪を切るシーン
作り込みがリアルで丁寧、出来栄えは細部に宿るものだ

東京の映像が美しかった
東京で生まれて育ったけどこんなにエモくは…ない笑
「みんなの憧れで作られてゆく幻の東京」を切り取ったかのよう
安いドラマみたいに2人の女性を対立構造で描かなかった点も好ましかった
女性の対立を煽る作品て古いし悪趣味だと思う。

華子と美紀は女性が置かれてきた生きづらさをすり抜けて1歩を踏み出す
フレッシュな息吹で次世代への閉塞感の伝播を断ち切れるといいね( ˊᵕˋ*)
最後が少し説明くさくなったけど
終わりは爽やかー

【階層の正体】
原作者山内マリコが"貴族"と表現したのは"富裕層"とも違って経済力だけでなく“血統"が必須の階層
英訳すると“Establishment/エスタブリッシュメント"かな?
丸2年取材する中で著者が最も共感しにくかったのは
「この階層の人たちは代々受け継がれてきた家族のスタンスを変えないようにするために結婚相手を選ぶ」というルールだったらしいw

幸一郎は世襲政治家の家系で華子の家より上層に属するという構図が面白い
上には上がいるってことよね
たとえば吉田茂の孫である麻生太郎は娘をロスチャイルドの分家に嫁がせている
→そのロスチャイルド家は元はドイツの金貸しだったが次第に勢力を拡げ、高貴な血筋を求めて多額の持参金を付けて娘を名家に嫁がせてきた
1822年イギリス王室に多額の金を貸付けたロスチャイルドは遂に見返りとして男爵家の称号を得る
→つまり現時点で世界のヒエラルキーの頂点は英王室かな?

うーん、ヒエラルキーってイヤな言葉だな笑
上には上の階層があってキリがないし、血統を求める行為の正体は人より上に立ちたいというパワーゲームだ
不毛だわー
終わりなきパワーゲームから降りた華子と美紀が幸せでありますように♡
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