ムギ山

あのこは貴族のムギ山のレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
3.0
ちょっと結婚に焦り気味の主人公・門脇麦が、何人かのハズレに会ったあと高良健吾に出会って無事婚約できたので、お姉さんが「あの人、粘らはりましたなあ」「粘っただけのこと、あったなあ」とか言うかと思った(ちなみに市川崑の『細雪』のセリフです)。もちろんこれは映画の序盤なので、それからいろいろあるのである。

貴族の高良健吾・お金持ちの門脇麦・庶民の水原希子の階層差がテーマでその描写の解像度が見どころになっているのだけど、ちょこちょこ「そんなことあるんやろうか」という部分があって、無論わたしは貴族でも金持ちでもないので「上流階級はこんなんなのかしら」とそのモヤモヤを抑えるしかなかったりする。そしてそのモヤモヤの大部分は原作由来のものなので、詳細は小説の方の感想に譲ろうと思う。

ただ一点、門脇麦が離婚を決意して一足飛びに高良健吾の実家に申し入れに行く場面になるのだが、その前に自分自身の家に離婚の意志を伝える場面がぜひとも必要ではないかと思う。それまで絵に描いたような箱入り娘として育ってきた彼女が(おそらく初めて)自分の意志で自分の道を歩み始めようとする、その最初の一歩だからである。そこを省略しちゃうのは「逃げ」じゃないかなあ(もちろんこれも原作由来の瑕疵である)。

原作にはない、高良健吾の家から離婚して出て行った女性が出てくるエピソードがつけくわえられているのはよかったです。
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