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あのこは貴族のCookieMonsterのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.1
人物の立ち位置と乗り物との関係性がとても秀逸だったので自分の中で整理
冒頭、門脇麦はタクシーでホテルへ向かう
街は流れる風景に過ぎず、彼女の関心はそこに暮らす人々にない
結婚相手を探し合コンをするときも移動手段はタクシーで、彼女は運転手に頼るよう他人に運命を任せる

結婚が破綻していると気づいたとき、彼女は自らそのタクシーを降りる
自分の乗っている人生のレールから外れることの比喩でもあり、自分で自転車を漕ぐ水原希子の世界に降り立つ象徴的な仕草
その夜彼女は橋の上で向こう側に手を振る
他人に全てを任せる世界から訣別し、向こう側にある自転車の世界へ足を踏み入れる

ラスト、石橋静河と三輪車にのる
水原希子と山下リオの漕ぐ自転車のスピードより遅く坂道は先行きの困難さも想像させる
ただ初めて自分の足で歩き始めた門脇麦に馴染むスピードで、子供に戻ったかのように三輪車で、まだ歩き始めたばかりでも、明るい未来を予兆させるように2人は笑顔だ

水原希子と山下リオの何でもない自転車のシーンがあそこまで胸に迫るのは、東京という街でひとり肩肘を張って生きてきた水原希子が初めて人に求められ、同じ船に乗る人をみつけられたからで、だから山下リオが電車に乗ろうとするところを二人乗りを誘い、互いに自転車を漕ぎ合い家路につく

求めていたのは恋人ではなくパートナーで、伴走するのは同性でも構わない
中華屋で感じたあの孤独はもう過去のものとなり、夜空に淋しさが昇華されていく様がどうしようもなく美しく感じたのだと思う
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