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あのこは貴族のakiraのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
3.9
いい映画。

東京の中心で生きてきた"貴族"の子と、地方から上京して身ひとつで稼いで生きてきた子、どっちも自分の立場とはちがうのに、不思議に共感できるところが多くて見入ってしまった。

映像の美しさとは対照的に、閉塞感と孤独感で胃がキリキリするような場面が多い。だからこそ、主人公とその周りの女性たちがたがいを尊重して、賢明に生きているのが感動的でもある。
本当になんてすてきな子たちなんだ、頼むから幸せになってくれ、と思った。

男性キャラはいやなやつばかりだけど、彼らの苦悩もほんのり匂わせていて、作り手の優しさを感じた。

あとは、ちょっとしたやりとりを通して、キャラクターの感情の動きがきちんと伝わるのがすごいと思った。こういうのは脚本の力なんだろうか。
何気ない雰囲気で映画の話をしているだけなのに、ある関係の終着点の見せ方としてとても品よくしっくりくるものになっている等、セリフではない情報での説明がとてもスマートだった。

シンプルに"貴族"の暮らしを覗き見るのもたのしかった。
当たり前にタクシーばっかり使ってるなあとか、部屋に入ってからもずっと正座したまま移動するんだなとか、細々としたところに独特の文化がにじみ出ていて面白い。

あとは劇中の何気ないセリフをとおして、ふと自分の部屋を省みて、自分の物だけで満たされた空間を持っているというのは幸せなことなんだな、と思った。
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