コザカナカルシウム

あのこは貴族のコザカナカルシウムのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
3.8
東京の松濤出身のお嬢様である華子が婚約者の愛人である地方出身の美紀と出会うことで、自分の足で歩いていこうと決心する話だ。

愛人とその婚約者なのに対立するどころか、華子は美紀の生き方に励まされるし、美紀は華子と出会ってそれまで切れないでいた居心地のよい愛人関係を自ら清算する。シスターフッド好きにはたまらん作品だ。

「東京と地方」や「持つ者と持たざる者」という対立軸があるものの、この映画のテーマは「自分のコミュニティから出ようとしない人と挑戦していく人」。華子と美紀はお互いと出会うことで、居心地の良い関係から自分らしく生きるために挑戦していく女性へと成長する。

本当は手を結ぶ相手である女性を対立させようとする社会について言及されているのは、柚木麻子の「ナイルパーチの女子会」と同じでとても共感した。

原作があっての映画化なんだけど、原作は映画の解説書のように華子の心情が書かれていて映画を観た後に読むのがオススメだ。映画はほどよく省略されていて、「華子はなぜ離婚したのか?」もっと小さなエピソードでは「華子はどう思って大衆居酒屋から逃げ出したのか?」など、イマイチ分からなかった。原作では詳しく書かれていたので、映画を観た後でも、いや映画を観た後だからこそ楽しめた。

この映画は…まず映画を観る。そして原作を読む。それを踏まえてもう一度観ると余すところなく楽しめる。