茶一郎

リフ・ラフの茶一郎のレビュー・感想・評価

リフ・ラフ(1991年製作の映画)
3.5
(記録)
 「私にとっても最悪な検閲の時代」後のケン・ローチ監督の新天地的作品。全最低の労働条件で働く日雇い建設業者男たちのユーモラスな日常と、その内の一人の恋愛が、全編、軽い語り口で描かれる。
 タイトルクレジットと共に羅列されるホームレスがロンドンの町並みは、おおよそ自分の「ロンドン」のイメージと結びつかない。男たちは当時のサッチャー政権に対して言いたい放題、イギリスの階級社会の闇は深い。

 そんな出口の無い地獄のような社会に、僅かな光を見出すのがケン・ローチ。
 『ケス』でハヤブサノの飼育をクラスで発表し称賛される主人公少年のように、ヒロインの女性は「歌」で、またアフリカ系の労働者はいつかお金を貯めてアフリカに旅行するという「夢」で、この地獄に何とか光を見つけようとしている。

 しかし何も変わらない現状、劣悪な労働環境も変わらない。労働者とそれを管理する人もまた労働者、搾取構造がグルグルと回り、最後に発散するはずのフラストレーションも……
 そして、映画は、下には下がいると言わんばかりに、日雇いの男たち・ホームレスと住まいを同じにしていた「ネズミ」たちを映す。実は、「ネズミを踏みつける日雇い男たち」こそ、この社会全体にある搾取構造のメタファーだったのだと気付いた。
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茶一郎

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