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キングダム・オブ・ヘブン ディレクターズ・カットのyのレビュー・感想・評価

5.0
ディレクターズカット版が追加された!
ディレクターズカット版は最高。
個人的にはリドスコ最高傑作。
通常版も面白いですが、1時間もカットしてたらそりゃコクはなくなりますよね。
なので観るならDC版をおすすめします。


ブラックホークダウン以降の、冷徹な…というか、冷たさすらない、温度がないドライさ(※)で描かれる"物理的な現実"…というリドリーの規定トーンと、それ以前のロマンティックで絵画主義的な画面のアマルガム。
ある距離感をもって、しかし極端に美麗に描かれる中世の戦。元CMディレクターならでは(今更言うか感もあるが今でもたまに撮ってますからね)の、象徴的な語りもキレッキレ。
まだ巨大セットを建てロケで撮ってた時代ならではの説得力ある美術、それを見事に拡張してみせるVFXづかいも見事。同時期に乱発されてた合戦もの史劇の中にあって、画面でやろうとしていることのレベルが頭ひとつどころでなくズバ抜けている。超望遠でとらえられた大軍勢、うごめく人と旗の群れがシネスコ画面を埋め尽くす画は、この手の映画の歴史に残る名ショットだと思う。

攻城戦、防衛戦モノとしての面白さとか、
史劇としての面白さ、題材選択の妙、それを成立させるためのフィクションの使い方とか、書きたいこといっぱいあるのでまた追記します

いま僕が勝手にリドリーフワフワと呼んでいる、空中を漂う軽い雪の特殊効果を初めてみたのもこの映画だった。
日本ではあまりない感じの、乾いてピリッと冷えた空気を伝えてくるような雪。
10年後くらいに映像制作会社に入ってから、暇な時に調べ、撮影用特殊効果のスノービジネス社が出している雪の特殊効果グッズ、スノーキャンドルによるモノだと知った。意外と高くて、まだ自分の仕事では使えたことがないけれど、憧れの雪です。


エルサレムと十字軍のことさえ知ってれば筋は分かるのでご安心を。知らずに見て話の意味すらわからんかったという人には残念でしたねとしか言いようがない

※そういえば「悪の法則」で、Truth has no temperature. というそのまんまのセリフがありましたね
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