@渋谷ユーロスペース
『みんなのジャック・ロジエ』にて。
この作品は結果として寡作だったジャック・ロジエ監督の遺作となってしまったもの。
これまでの彼の作品とは違い、ここでは作中、それまで顔見知りで無かった者たちがヴァカンスのために偶然居合わせたような瞬間を映し出したりはしない。
なのに、なぜだろう。
観終わった後に、とあるひとつの季節を見ず知らずの誰かと過ごしたような、特別な冒険の思い出をもらったような気がするのは。
ある芝居のリハーサル風景から本番まで。
ただ、それだけ。
もちろんそこはジャック・ロジエの描く物語、スムーズに進むわけは毛頭無く、予想不能な事件が巻き起こっていく。
しかし、その問題のほとんどはこの人が原因ではないか… と思われるガストンも、そのガストンに振り回されるフィフィも、ガストンの劇団員のルイス・レゴも、わりと皆なにが起きても飄々とその事件を受け入れる。(もしくは受け入れない、飄々としながら。)
そして結果、破綻しまくった舞台の本番… からの、ラストのスペイン風オペレッタ、フィフィの舞踏。
毎度、なにもプランニングなんて無かったのではないかとさえ思わせるジャック・ロジエの物語の進ませ方なのに、なぜかこういったラストのシーンで奇妙なカタルシスがもたらされる。
まるで監督自身が「ほら、ちょっとの問題なんて、楽しんでいけるだろ。なにが起きても気にしすぎるなよ!」と微笑みかけてるよう。
「バニラ味のミルクを飲まなきゃ…。いや、後でいい!」