りょう

イングリッシュ・ペイシェントのりょうのレビュー・感想・評価

4.2
 日本で劇場公開された当時は、アカデミー賞9冠の直後だったこともあり、かなり話題になっていました。個人的にはいまだに好きな作品ですが、すでに27年前のことだし、戦争の混乱に紛れて不倫する男女の物語なので、現代的な価値観では評価が微妙なのかもしれません。
 何より、チェニジアの砂漠とイタリアのロケーションが素晴らしいです。最近ではCGでやってしまいそうなアフリカの砂漠の風景ですが、フィルムの質感も含めた映像を堪能できます。サントラもかなり聴いていますが、2つのメインテーマを中心として、緩急のある劇伴も物語にマッチしています。
 ジュリエット・ビノシュがアカデミー助演女優賞を受賞していますが、「これって助演なの?」って思うほどの存在感です。彼女が演じた従軍看護士であるハナは、戦争で愛するひとたちを亡くしてきたので、自らを呪うようなところはありますが、少し天真爛漫な雰囲気で、喜怒哀楽の表情がとても豊かなキャラクターを心地よく演じています。不倫などで苦悩する主役の2人と対比されるので、それが際立っていました。主演女優賞では、キャサリンを演じたクリスティン・スコット・トーマスがノミネートされ、「ファーゴ」のフランシス・マクドーマンドが受賞しています。2人ともジュリエット・ビノシュよりも登場時間が少ないような…。
 アンソニー・ミンゲラ監督は、「コールド マウンテン」でもそうでしたが、戦争でひき裂かれる男女を描く傾向があります。アルマシーは兵士ではないので、戦場が舞台にはなりませんが、彼の過去の真相が判明する終盤の展開は、あまりに理不尽で悲痛としか言えません。自業自得なところもありますが、やっぱり戦争の犠牲者です。
 アルマシーとキャサリンをめぐる恋愛の物語でしたが、ハナの清々しい表情のエンディングを含めて、最後までジュリエット・ビノシュの印象が強烈な秀作です。
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