ヨウ

イングリッシュ・ペイシェントのヨウのレビュー・感想・評価

3.9
戦時下での物語とはいえ戦災は後景におかれ、基本的には過去パートで描かれる北アフリカの広陵とした砂漠と、現代パートで描かれるイタリアでの二組の恋愛劇です。

アルマシーの激情的な不倫愛とその結末、ハナの穏やかな恋愛と未来への約束、その二組の恋愛の緩急ある劇伴と対比、および二人の交流がとても心に残りました。

もちろんモラルの問題はありますが、どちらの愛情も違う側面からみた恋愛の本質なのだと思います。

泳ぐ人の洞窟の壁画も、教会の壁に描かれた絵画も、時代は違えど人間が生み出した芸術。それに惹かれる様子がアルマシーもハナも似通っていて、きっと本質的な部分では繋がっているのだと感じました。だからこそ、あのアルマシーへの献身的な看護はハナ自身の魂の救済であったのかもしれません。

タイトルは以前から知っていましたが、ここに込められた皮肉と悲劇で、また違う響きを持つようになりました。
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