雨宮はな

アップタウン・ガールズの雨宮はなのレビュー・感想・評価

アップタウン・ガールズ(2003年製作の映画)
4.0
毒親育ちに捧ぐ、心のサプリメント。
ピーター・パン症候群な女性と、未来のアダルトチルドレンが、きちんと自分を受け止めるまでのお話。
こんなに可愛いのに、ものすごく苦しいシーンがたくさんある。

観ることで自分をちょっと見直したり、立ち止まってみることができるかもしれない。

モリ―(主人公)とレイ(子守先)の二人には心をぐっと掴まれることが多かった。
彼女たちは陰陽のように、二人でひとつの性質を表していると思う。
片方は大人になれない子供のまま、もう片方はまだ子供なのに大人のフリをしていないといけない。
生きづらさを抱えた現代人には、どちらもビシバシ刺さってくるんじゃなかろうか。

主人公のモリ―のオツムの弱さには閉口するしかないし、イングとヒューイという友人がいてくれたことが奇跡だと思う。
常識がまるで備わってなくて、「親がいない(躾のされなかった)子供の行く末」が恐ろしいし、可哀そうだと思った。
レイに指摘される通り、子供のままでなんとかいようとしているのは、正常化バイアスのひとつなのかもしれない。

一方のレイはレイで、大人びているとか「手がかからない」とその時期は大人が喜べるだろうけど、明らかに問題をきたすのが目に見えて辛かった。
荒療治だし、モリ―のような人間はどうかと思うけど、今のうちに「こども」に戻れてレイは本当に良かったと思う。

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レイが父親に話しかけるシーンは涙腺をバチボコに叩かれる。
「潔癖症で神経質な子供」のテンプレ演技ができるだけでもすごいわよね、ハイハイ、なんて思って油断していると持っていかれる。
あの、いきなり訪れる柔らかくて暖かい、希望が灯ったようなシーンの穏やかさときたら!

もうひとつは、レイの最初の発表会シーン。
終わってポーズをとりながら、一所懸命目をキョロキョロさせている様子がいじらしくて苦しい。
そのあと、涙をぐっとこらえながらポーズを崩すまいとする仕草をみたら、レイを嫌いだなんて言える人はいないはずだ。
雨宮はな

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