【叫び】
まるで、50年代アメリカのカートゥーンアニメのようなタッチで描かれる、限りなくブラックでシュールな世界観。
もはやスマホなしでは生きられない人間達の愚か過ぎる生態を痛烈に皮肉る。
常にスマホの画面を見ながら歩くゾンビのような大人たち。
数メートル先のマンホールの蓋が空いていることにも気がつかず、一人ひとり連なるように穴に落ちていく。前を歩いていた人が落ちたことにも気がつかず次の大人も落ちていく。
デートしているカップルはお互いの顔を見ることもなく、自分のスマホだけをみてニヤニヤしている。
その傍らでオーダーを待つウェイターもまたスマホを覗き込んでいる。
生きることを悲観しビルから飛び降りようとする少女を見つければ、誰一人彼女を説得するでもなく、彼女にスマホを向ける。
(早く飛び降りろよ)
もはや、彼らの目の前にリアルは存在しない。
目の前で起きているリアルな出来事ですらも、彼らはスマホのカメラを通して「スマホの情報」として見たいのだ。
恐ろしいくらいに滑稽なのに、何故か笑えない。
ただ一人、スマホを持たない少年が必死に存在を訴える。
しかし誰にもその子は見えていない。何故ならその子はリアルであってスマホの情報じゃないから。
たった3分のショートフィルムなのに、お腹にズシンと走る衝撃。
最後の最後まで救いはないのかもしれない。
でも、何かしらの啓蒙になるのかもしれない。
いや、ならないだろうな、きっと。
もう、リアルなんて誰も必要としていないのかもしれない・・・。