タイレンジャー

愛は、365の日々でのタイレンジャーのレビュー・感想・評価

愛は、365の日々で(2020年製作の映画)
1.0
”拉致監禁版『プリティ・ウーマン』”であり、”金持ち版『完全なる飼育』”。

確かに最大の注目ポイントである性描写は攻めているほうだと思います。

例えば、序盤でマフィアの親分であるマッシモ(濃すぎるイケメン)がプライベートジェット機の中でCAに口淫を強制する場面がありますが、CAが咥えているモノが僅かに見え隠れしたりします。モノが本物か偽物かはともかく、それが見えるくらいのカメラアングルで捉えているということなので、AVに近いような画だということです。

いかにも男性ホルモンがみなぎっていそうな容姿のマッシモは美女ラウラを拉致監禁して「365日間くれてやるからオレ様を心から愛するようになれ」と言い放ちます。彼が望んでいるのはレイプではなく、身も心も完全に結ばれるセックスなのです。

囚われの身であるラウラは当然、拒み続けますが、高級ブティックで買い物三昧、高級グルメ三昧、ロマンチックな体験三昧の「お姫様扱い」にどんどん気を良くしていきます。

で、二人っきりでクルーズ船で遊覧中にとあるアクシデントが発生したことから、二人の心に火がつき、自家発電でもできそうな勢いで貪り合うようにセックスに耽ります。ベッドで一戦交えたかと思えば、今度は白昼堂々、船の甲板の上で第二戦。その様子をドローンの空撮で壮大に捉える映像には大いに失笑しました。ミスチルのTomorrow Never Knowsのミュージックビデオみたいなカメラワークで洋上の青姦を見せるんですよ?

で、演出として何がダメかって話ですけど、こういった性描写の場面のたびに、登場人物たちの台詞の音量が小さくなって、代わりに最近のイケてる感じのポップスが流れるんですよ。古い言葉で言うとMTV風な手法なのかもしれませんが、僕が耳に入れたいのはポッポスなぞではなく、喘ぎ声など性行為から発せられる艶めかしい音のほうだ!

まぁーたしかに『フィフティ・シェイズ~』シリーズでもこんな演出はありましたが、本作はやりすぎです。性行為の場面にはイケてるポッポスがもれなく被せられるので、風情というものがありません。

そう、本作の全体を覆うのは「官能的な要素や展開がイケている」という価値観なのです。それはファッションアイテムや、ライフスタイル、社会的ステータスとしてのエロスです。「金持ちでワイルドなイケメンとのセックスはこんなにイケてる」というわけです。

なので、本来の拉致監禁という状況が生み出すヒリヒリとした背徳感や、アブノーマル感は本作においては希薄なのですね。