るるびっち

青春の殺人者のるるびっちのレビュー・感想・評価

青春の殺人者(1976年製作の映画)
3.3
殺人ホームドラマである。
高度経済成長時代に、旧来の価値観を焼き捨てる新しいが無軌道な若者の姿を描いている。
とはいえ書いてる側が旧来のホームドラマしか知らないので、結局嫁姑の古いホームドラマに殺人をまぶした感じになっている。

息子の恋人が気に入らないということで、息子といがみ合う両親。
全然無軌道とか、新しい価値観ではない。
嫁と姑・舅のいがみ合いの話だ。古臭い。

オヤジを殺す=旧体制を壊す。
というメタファーだが、夫が死ぬと途端に息子を頼りにして、なびく母親が可笑しい。ここにあるのも古い道徳観だ。
江戸時代の貝原益軒などの女訓思想、三従の教え的な。
「幼くしては父兄に従ひ、嫁しては夫に従ひ、夫死しては子に従ふものなり」
もう、書き手の道徳観がカビ臭い。
或いは、日本特有のマザコン息子と束縛母の関係か。
新時代の無軌道な若者の姿を描くつもりが、結局はドメスティックなホームドラマになってしまうところに邦画の湿気を感じる。

母親を市原悦子が演じている。
この母が中々死なない。
そのまま恋人と逃げる息子を、ターミネーターのように追えば良い。
どこに逃げても、物陰から母の視線を感じると怯えるカップルなら面白い。
市原悦子が、物陰からじっと見ている。
家政婦は・・・いや母親は見た!!
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