カンヌ・レーベル選出作品。サム・スピーゲル映画テレビ学校を卒業したローゼンバーグは、イスラエル映画基金から助成金を得て、実業家の実父ナタン・ローゼンバーグを主演にしたコメディ『The Night Escape』を初長編映画として制作しようとしていた。両親は俳優ではなかったが、これまでも彼らを中心にした短編を撮っていたので、その延長で父親を主演にしたようだ。しかし、そのプリプロ中にナタンの末期癌が発覚し、1シーンも撮影できないまま亡くなってしまった。そこで、ダニは初長編を悩める監督アサフとその家族のドキュドラマを登場させることで、ダニが体験した出来事、そして体験することになっただろう出来事を再構築してみせた。アサフを演じるのはジャーナリストのRoni Kubanだが、彼の妻はダニの実際の妻で女優のNoa Kolerが演じており、現実と虚構が入り混じった設定になっている他、父親ヨエルを撮影するシーンと撮影された映画内映画を等価なものとして繋げているので、映画内の現実と虚構も曖昧にされている。それに加えて、ダニ本人が撮った父ナタンの映像も登場し、現実と映画と映画内現実と映画内映画が混ざり合っていく。