KnightsofOdessa

John and the Hole(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

John and the Hole(原題)(2021年製作の映画)
2.0
[作りかけバンカーに家族入れてみた] 40点

カンヌレーベル選出作品。郊外に暮らすジョン少年が作りかけのバンカーに両親と姉を監禁する話。なぜ監禁するかは明かされず、ジョンは家族がいない家の中で遊び回り/父親の車を乗り回し/金を引き出し/友人を勝手に家に呼ぶが、それらの行為が家族によって禁止されていたわけでもなく、監禁後も特に楽しんでいる感じも解放された感じもしないのが不気味。"なぜジョンはこんなことをしている?"という疑問について、観客と同じ目線にある両親と姉で議論しているが、特に仲が悪かったわけでもないので結論は出ずに責任を押し付け合っている。それこそが巷に溢れた魔法の用語"中産階級の機能不全"に当てはまるのかもしれないが、正直これくらいの衝突は人間が二人以上いれば必然というレベルで説得力には欠ける。"何がしたいか分からない"という不穏さは画面の不穏さとマッチしているんだが、意味不明なままにしとくという選択肢を放棄して裏を読ませたがる思わせぶりさと気取った小綺麗さが鼻につく。狂気にも寓話にも振り切れず残念。唯一"飼育"関係を高低差で表し、それを一画面に収めない選択だけは良かったが(穴の広さ的に収まらなかっただけな気もするけど)。

不思議なことに本作品は"『ジョンと穴』という物語を語る母娘"という外枠がある。明らかに余計なんだが、殺人鬼の幼年期みたいなジョンの行動についてある程度の答えを教えてくれる。母親がいきなり12歳の娘を置いて家を出ると宣言して荷物をまとめ始める行動の中に"大人になる=責任を持つこと"というメッセージが隠されているのだ。が、そんなことをしても陳腐になるだけなので特に必要性は感じない。尺を伸ばすためだけの無駄な時間。
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