このレビューはネタバレを含みます
ナゴルノ・カラバフの閉鎖空港にやってきた監査員のお話。2020年の紛争の前に撮影したのだとすれば悲しい。
空港の監査と、滑走路を通り道にする水売りの少年が淡々と描かれます。空港そのものの非日常性や異境感が素晴らしく醸し出されていました。
ナゴルノ・カラバフという国自体の存在感の危うさを、空港というモチーフに絶妙に落とし込んでいるよう。
人物たちの口を通して、ナゴルノ・カラバフに関する近年の歴史が語られはしますが、政治色は強くなく。独立の啓発よりも、根源的な現実と理想の葛藤を描いているようでした。その意味で、滑走路のラストシーンはとても印象的。
アランがどこまで意図的に侵犯したのかは分かりませんが、結局何も起こらないという結末にも、この国の現状以上のものを感じました。
かなり抑制的で、ナゴルノ・カラバフを閉じた空間として捉え、その中で様々な解釈を与えてくれるような名作でした。