空海花

スザンヌ、16歳の空海花のレビュー・感想・評価

スザンヌ、16歳(2020年製作の映画)
3.6
2020カンヌ国際映画祭「オフィシャルセレクション」選定。
20歳の新人女性監督スザンヌ・ランドンの監督・脚本・主演映画。
彼女は名優ヴァンサン・ランドンとサンドリーヌ・キベルランの長女。
15歳の時に執筆した脚本を19歳で製作に着手。

パリ・モンマルトル。16歳のひと夏。
うんざりしてるの。
男友だちも、女友だちも、学校も─

白シャツとジーンズ。
クラスメイトとのパーティーにさえ、その格好で出掛ける。
「ビールはつまらない」

そんな彼女の初恋は、劇場の外で見かけた、30代の舞台俳優ラファエル。
16歳のときめきが瑞々しい。
彼もまた同じ舞台の繰り返し、俳優仲間との付き合いに退屈を感じていて
出会ってすぐに、互いに惹かれ合う。

思春期の憂うつと恋愛への憧れ。
『17歳』でなく16歳で、恋愛に関してはまるで未知やファンタジーの世界。
父に服の好みを質問してみたり
両親の寝室に入ってみたりして
好奇心と甘酸っぱさが弾ける。
ちなみに父役はフランソワ・オゾン『17歳』のフレデリック・ピエロ。
この両親、家族がまた良いので
観る側はスザンヌに対して不安はない。
スザンヌとこの映画全体をあたたかく見守っていたくなる。
成熟した大人たち。

そして何と言ってもラファエル役アルノー・ヴァロワ。
紳士的で優しい表情、大人の仕草。
そして流れるオペラ。
ときめく少女の心の動きの視覚化は、若い女性にしか表現できない。

監督の好きなものをめいいっぱいに詰め込んで、オマージュに溢れる
まさに16歳という貴重な時間の宝物のような作品。
時に言葉を抑えて、身体言語のようなダンスで表現してみたりと意欲的な映像も。
あんなシンクロしてみたい。。

音楽はシンガーソングライター、ヴァンサン・ドレルムに体当たりで交渉。
最後に流れる歌が、鑑賞後もリフレインする、淡い中毒性のあるメロディ。
何だかグザヴィエ・ドラン『胸騒ぎの恋人』の“バンバン~♪”を思い出した。
若い才能は末恐ろしい。


2021レビュー#155
2021鑑賞No.345/劇場鑑賞#56


オマージュ
クロード・ミレール『なまいきシャルロット』
モーリス・ピアラ『愛の記念に』
ディアーヌ・キュリス『ディアボロ・マント』
空海花

空海花