いかえもん

七人樂隊のいかえもんのレビュー・感想・評価

七人樂隊(2021年製作の映画)
3.8
昨日観に行ってきました。
7人の香港映画巨匠によるオムニバス。

ノスタルジックで切なくなるような話もあれば、コメディもあって楽しかった。こういう映画は、監督までも知ってしまうくらい好きだー!っていう人しか観に行かないだろうなと思うから、皆さんのレビューも熱くて読んでて楽しいな。7つのお話のどれが好きかも人によって違ってて、それもまたいいですね。

サモハン監督「稽古」
サモハンの子供時代の京劇学校での練習を描いた自伝的作品。今は香港でも京劇学校はほとんどなくなってしまったとオンラインの舞台挨拶でサモハンが言っていたらしい。映画の中での師匠役をサモハンの息子さんが演じているんだと後から知った。ほのぼのとした中にも、ちょっとした教訓っていうか子供ながらに学んだことがそっと包み込まれていて、さすがだなぁと思った。

アン・ホイ監督「校長先生」
教師と教え子たちの絆を描いた作品。ちょっとした出来事なんだけど、なんだか自分の中に大事にある先生との思い出が、じんわりと胸にくる作品。

パトリック・タム監督「別れの夜」
香港を出て海外へ移住する人が増えた時代、とある高校生カップルの別れの夜を描いた作品。若さゆえの自分勝手さが痛々しくて刺さる映画。最後のシーン、ウォン・カーウァイを思い出させるなと思ったら、編集を担当されてた方だったのか。

ユエン・ウーピン監督「回帰」
香港に暮らすおじいちゃんと海外へ移住した孫との交流を描いた鉄板と言えば鉄板作品だけど、ユエン・ウーピン上手いなー。ただ頑固なだけじゃなくて、若い子のことも理解しようとするおじいちゃんのやさしさがハンバーガーに表れてたり、短い中に暖かい感情や切なさが凝縮されてて、素晴らしかった。ちょっぴりカンフーシーンもあるとこもファンサだよね。うれしくなった。

ジョニー・トー監督「ぼろ儲け」
投資での成功を夢見る男女3人のお話。オチがおもしろくて、あー、投資って言ってもしょせんギャンブルかぁ…そんなもんだよねぇって感じでおもしろかった。ジョニートーって言われないとわかんないわ、この作品は。

リンゴ・ラム監督「道に迷う」
サイモン・ヤムを主人公に変わっていく香港に対する複雑な心境を描いた作品。これもとてもよかった。これがリンゴ・ラム監督の遺作とはなんとも切ない。

ツイ・ハーク監督「深い会話」
まさかここでこの感じ?!さっきの余韻は?!っていうコメディなんだけど、とても楽しかった。「君は誰だ?」「マギーチャン」とか、「それはジョン・ウー」とか、知ってる人は笑える小ネタがあって、周りからもクスクス笑い声が聞こえた。

全7作品、どれも後からじわじわくるところがさすがだなぁと思う。
日本にいても時代がどんどん流れていって色々なものが変わっていく中で、香港は特に変わっていったものが色々あっただろうと思う。映画もその一つだろう。それを肌で感じながら映画を撮ってきた監督たちの様々な思いがこういうオムニバスになったんだなって感じ。過去のある瞬間のきらめきをとらえて、暖かさやなつかしさ、切なさを織り交ぜながら映像化されていて、後から思い出しては心がキュッとなる。香港映画好きの方にはお勧めしたい一本。
ジョン・ウー監督も参加予定だったらしいんだけど、都合つかなかったらしい。ジョン・ウーの短編も観てみたかったなぁ。