とらキチ

七人樂隊のとらキチのレビュー・感想・評価

七人樂隊(2021年製作の映画)
3.9
香港で活躍する7人の監督がそれぞれ1950年代から未来までの各時代を1つずつ担当し香港の人々の生活を描いたオムニバス。
“香港”という19世紀以降のアジアでエキゾチックな輝きを一際放っていた街へのレクイエム。万感の思いを込めて、“あの頃”の“香港”が描かれる。
各話で演じていた役者さん、特に女優さんが、本当にその時代当時に居た人にしか見えなくて、その再現度が素晴らしい。特に2話60年代の女教師と3話80年代の女子高校生。サモ・ハン師匠がビシッと締めていたり、あのユン・ワーが出演してカンフー込みで魅せてくれたり、レスリー・チャンを思わせる髪型だったりと、いろいろと“あの頃”のノスタルジーに浸らせてくれるし、SARSに襲われた00年代の描写には、現在からの視点からすると、とても既視感があって“あの頃”から全く学んでいなかった事がわかる。そんな切なさも伴った香港のスケッチのような物語が続くのだが、最後にはツイ・ハークにガツンとメタな感じでヤられてしまう。
また、50年代からの各年代でポッカリと空いてしまっている70年代、実はジョン・ウーが担当する予定だったのだという。体調不良により参加できなかったのが実に残念だし、香港にとっても70年代って非常に重要な年代だったと思うので、余計に惜しまれる。ぜひとも単独作ででも製作して欲しいし、観てみたい。
まだ行ったことはないけれど、どうせ行くのなら現在の“紅く染まった”香港よりも“あの頃”の“香港”に行きたかったなぁ…と思わせてくれた。
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