mofa

アンモナイトの目覚めのmofaのネタバレレビュー・内容・結末

アンモナイトの目覚め(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

この作品は、古生物学者のメアリー・アニングが題材になってますが、彼女がレズビアンであった事・シャーロットの関係などは、すべてフィクションのようです。
 なので、題材になっているとかは一切、クレジットで明記されてません。
 
始め、この作品は、
フェミニズム的なテーマが主軸なのかな・・・と思っておりました。
 一生懸命危険をおかしながら、
化石を発掘しても、女性である自分の手柄にはならず、極貧な生活は変わらない・・・・。女性はこういう時代があり、徐々に、その名誉を得ていくのかな?と思っていたら、ドンドン話が違う方向へ行くので、ちょっと戸惑いました。

けれど、最後まで観ると、この作品のテーマは、ともかく「自由」であるという事なんだと理解しました。
メアリーの、性別を超えた愛の自由、
最後の場面で、金の鳥かごに閉じ込めるの?と叫んだ怒りの言葉

それらが、ひたむきに危険をおかしてまで、メアリーがのめり込む化石発掘という作業にリンクしていくワケです。

彼女は、閉じ込められた古生物を、
自由に解放してあげたかった。
そういう、メアリーの中にある、大きな軸が、「自由」だったんじゃないのかな?と思います。

メアリーは自分の化石が別の人の手柄になっていても、それを、何とも思っていない感じがあります。
それは、メアリーが、そういう事を一切気にしていないからかも知れない。
逆に、メアリーは、自分が解放した化石が、再びショーケースで保管されているのを良しと思っておらず、逆に、その中の化石と、シャーロットの家に閉じ籠る自分を、重ね合わせていたのかも知れない。

博物館で、数々の偉人たちの肖像画の前で、メアリーの姿がピッタリと重なる場面がありますが重なっていても、メアリーは、その中にいるワケではありません。

そういう名誉の額縁を求めているワケではないメアリーの、自由への貪欲さが伝わってきました。
最後のシーンから先は、観客の手に委ねられます。彼女たちが、今後、どうなっていくのか。
シャーロットの挑戦的で決意のある表情は、2人で目の前のショーケースをたたき割るようにして、2人での自由を選ぶような気がしてます。

メアリーにとっては、フェミニズムも名誉も手柄も、「自由」ではないんですよね。
ただただ、すべてにおいて閉じ込められたくない・・・という単純で明快な気性が、彼女が没頭する発掘作業と重なっていきます。
 そんな無骨なテーマを、ケイト・ウィンスレットが、冷たく大胆に描いていて、
本人無自覚の、「自由」へのプライドが、
非常にうまく演じておられて、
さすが、ケイト・ウィンスレット!!

そして、そんなメアリーに惹かれていくシャーロットを、シアーシャ・ローナンが演じてます。
 病的な感じから、メアリーと親しくなる度に、自信に満ち溢れて表情になる。
そうすると、メアリーとは逆の性格が見えてくるのも面白い。
化石を発掘し解放させる事が大事で、
その化石の値段に意味を見出さないメアリーと、その対価を求めるシャーロット。
 この2人の違いが、終盤に向けての伏線になっていくんですよね。

メアリー自身を尊敬し愛しているシャーロットが、ケイト・ウィンスレットを敬愛するローナンとかぶりましたね。

2人のベッドシーンも、非常に無骨で荒々しくて、私は好きでしたね。
お二人とも体張ってます。
ですが・・・・・
メアリーが「自由」を無自覚に貪欲に求める人だったからこそ。

どうしても、こういう選択肢しかなかったのか・・・と引っかかってしまうんですよね。

というのも、始めに書いたけれど、
実在のメアリーがレズビアンであったのか、シャーロットとの関係がどうであったのかは、全くの想像・全くの創作なワケです。
(実際、親族からのクレームもあったそうですが)

でも、実在の人物だからこそ、化石発掘と自由のリンクが、見事に浮彫にされているし、ケイト・ウィンスレットとローナンだからこそ、
この関係性が見事に描かれていたとも思うし、あの時代でも、同性愛に躊躇しない所もメアリーらしいと思うし。

確かに、こういう設定だからこそ、
秀作に仕上がっているのかな・・・とも思うので、難しいな~・・・と。

まぁ、でも、メアリーの事だから、
自分の終わった人生は、自由にどっかに飛んでいってるから、気にしてなさそう(笑)

歴史上に、こんな女性がおられた事を知れて、良かったです。
そして、
様々のものからの解放の必要性を感じる中で、それもまた、「自由」ではないという事。
何となく、「自由」たるものの基本を感じさせてくれる秀作でした。
mofa

mofa