桃

Summer of 85の桃のネタバレレビュー・内容・結末

Summer of 85(2020年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

フランスの色彩と瑞々しい若さが美しい映画。
冒頭オレンジのタイポグラフィはゴダール感ありますね。

1985年、友達に借りたボードで転覆したアレクシは、偶然通りかかったダヴィドに助けられて、友達になる、そこから60日間の少年の初恋と成長の物語。

美しい海沿いの街で、お人好し家族にお風呂に入れてもらってされるがままの主人公はどこか、リアルジブリの世界のよう。

ミステリアスで聖人のようなダヴィドと急接近をするアレクシは夢のような時間を過ごすが、偶然助けた酔っ払いとの距離感、見えない時間にどこか猜疑心も抱く。

自分を特別扱いしてくれて、自分に新しい世界を見せてくれるダヴィドに恋に落ちるには、時間はかからなかった。

印象的なシーンはダンスフロアのシーン。
みんなが飛び跳ねてはしゃぐ中、突如ダヴィドはアレクシの耳にヘッドフォンを着ける。
聴こえるのはSailing。
周りの世界が違って見え、もうダヴィド以外が見えなくなる。

やがて2人の前には、イギリスから現れた21歳の女の子ケイトが現れ、関係は速度を上げて崩れて行く。

ダヴィドにとって、父親の死はまだ乗り越えられたものではなかったのでは。
自分の中でのバランスを崩したまま、共依存の関係にハマり、本当の居場所を探すべく、相手を変えていく。
一方アレクシは、自分にとっての正解を見つけたようなダヴィドの関係が取り返しのつかないほど、深いものになっていた。

2人の関係を小説さながら再生しながら、現在のアレクシは自分を登場人物の1人とメタ認知して客観的に見つめ直して行く。

最後は穏やかに、青春を自分の糧にして、ほんの少し強くなって次の人生を歩んでいく。

物語は冒頭から結末までみえているものの、数々の美しいシーンで惹き込まれながら鑑賞出来た。
桃