Toineの感想文

Summer of 85のToineの感想文のレビュー・感想・評価

Summer of 85(2020年製作の映画)
4.5
【愛とか恋とか1つで良いのにどうして】
君がくれたこの想いは幻想。

夏の恋(BL)に1番乗りしたかったの。
普通の恋(BL)じゃなくて、心臓をチクりと刺してくれるような救われない恋(BL)を疑似体験したくて。
だったらフランソワ・オゾン監督一択だと思ったのです。BLでしか接種できない栄養があるんだよ私には。
そんな訳でワクワクソワソワしながら鑑賞いたしました。

児童文学作家エイダン・チェンバーズの小説「Dance on my Grave」を原作としたオゾンワールド。

何にでも終わりがあるって解ってるのに目の当たりにすると辛すぎる。
しかも予想していないタイミングで来る終わりは身体が引きちぎられるような苦しさを伴う。

博愛主義で色んな人と火遊びしたい人と、誰か1人を独占したい人。
どちらの愛し方が良いとか悪いとかそんなことは問題ではなくて、時間の流れも感情の変化も元には戻せないから。
ただ埋めることのできない心のすれ違いが観ていて死ぬほど苦しかった。

最後はハッピーエンド風だけど1985年の心の傷は小さな棘となってアレックスくんの胸の中に一生残り続ける。
ダヴィドくんを思い出す度に彼の胸はキュっと痛むはず。切ないですね。

そしてオゾン監督が撮る信頼と安定の美しい画が最高に良かったです。
アレックスくんを使った色んな自殺方法の再現映像や後半パートでアレックスくんが背にした本棚に置かれた骸骨がメメント・モリの絵画を思わせドキっとしました。好みです♡
海を主軸とした瞳やお洋服などの色んな種類の青色を見付けるのも楽しかったです。

アレックスくん役のフェリックス・ルフェーブルさんがオゾン監督が好きそうなお顔だったので微笑ましく鑑賞していましたら玩具にされてて笑いました😂
ウサギちゃんやミニスカは爆笑してしまった🤣🤣
監督の趣味を物語にねじ込みましたよね?w
変態する所はしっかり変態していて大変よろしゅうございました。

"顔と体を好きになって
心も理想どおりだと期待した"
ケイトさんの言葉が残酷だけど真理過ぎて心に響きました。人間はみんな自分勝手だから。
この台詞は忘れられないな。

ティーン向けの青春映画と思わせておいてしっかり大人向けの恋愛(だけじゃない)映画なんだから痺れました。
都合が良すぎない?という展開なのもアレックスくんが冒頭で言ったメタ台詞の通り結局は彼の小説だからどこからが現実でどこまでが虚構か分からない。伏線張ってたのですね!
やられた…騙される快感。素晴らしい。
ますますオゾン監督へのリスペクトが高まります。