藻類デスモデスムス属

Summer of 85の藻類デスモデスムス属のレビュー・感想・評価

Summer of 85(2020年製作の映画)
4.5



近さと青さを感じる。画面の下半分の海がざぱんとこぼれでてきそうだった。あるいは、そこまですぐに泳ぎにでれそうだった。たぶんそれは音の近さだったんだろう。波の音が耳のそばで大きく聞こえ、映画が寝ている人の呼吸から始まったときのように、それだけでしっかり握られ、ヨットが転覆するとき一緒に転覆し、ジェットコースターで隣に座るような、同じ笑い方を過ごした。スピードの彼方を、暴走とは違うといって説明するシーンがとても好きだ。しかし、ここだけといって切り取ることはできないような、ひとつのシーンだったとも思う。『波のように遠方にいったところ、かなた』。85年の夏は、岸ではなく、沖だった。クラブでの異なる流れも、墓での行いも、遠ざかっていくものの、近くにあることだった。彼は波ではなかった。遠ざかっていく性質のものであっても、それ自体ではなかった。ただ、足りないほど近くにいながら、遠方にいったところという状態にも、手が届きそうなほどの近さにあったのだと思う。スピードの彼方に追いつこうとするとき、『加速している感覚はない』といった。『追いついたらどうなる』と聞いた。ばかげた夢によく似ていた。