みかんぼうや

アナザーラウンドのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
4.0
酒は飲んでも飲まれるな、そういうこと。ジャケ写と予告から、酔っ払いたちを中心にしたコメディだと思っていました。いや、前半の“人はアルコール血中濃度を一定量高めておくことで、より高いパフォーマンスを発揮する”という実験のくだりは完全にブラックコメディで結構笑いどころも多い。もはやアル中啓蒙映画。

それ故に、この作品は、本作監督であるトマス・ヴィンターベア監督作にして大好きな「偽りなき者」とは全く対極にあるような作品なのだと勝手に勘違いしていたら(画作りこそやはり同じ監督だな、と思いつつも)、中後半の展開で「なるほど、やはり“偽りなき者”を撮った監督の作品だ」と納得。

この監督、やはりちょっとしたズレで一気に崩れる人の弱さや脆さを描くのがなんとも巧い。そして、同じく「偽りなき者」での熱演が光るマッツ・ミケルセンがこちらでも見事な演技。

紆余曲折ありながらのラストシーンは個人的に一番好きな終わり方。「アンダーグラウンド」や「佐々木・イン・マイ・マイン」といったマイ・ベスト10に入る映画たちに通ずる、吹っ切れたかのように画面越しに溢れ出るエネルギーで、いい余韻をいただきました。
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