その日は友人と北千住で2軒やり終電で解散したが物足りず、帰路の西新井で一人飲み直すことに。どれほど飲酒したか覚えたものではないが、じきに夜も深まり、店じまいで追い出されたｵﾚは徐にｳﾞｧﾙｷﾘｰ(ﾚﾝﾀﾙ自転車)に跨ると瞬間、身体に異変を感じた。
解放感。
充実感。
浮遊感。
高揚感。
一体感。
残尿感。
隆々と漲るﾊﾟﾜｰ、脈々と溢れるｴﾅｼﾞｰ。血湧き肉躍り、身体が内側から熱くなってくる。全身にはﾕﾗﾕﾗと漂うﾁｬｸﾗ。驚くべきことに、そこから自宅まではおよそ20分ほどのはずが、疾風迅雷爆力魔波。ｵﾚﾊはものの数分で自宅を置き去りに。
どこへ向かうのか。
どこまでも行ける気がした。
環状七号線をひたすら西へ。西へ。一心不乱にｳﾞｧﾙｷﾘｰで闇夜を切り裂く。まさに狂い咲きｻﾝﾀﾞｰﾛｰﾄﾞ。
ｺﾞｰﾙﾗｲﾝがｽﾀｰﾄﾗｲﾝの終わりなきｾﾞﾛﾖﾝﾚｰｽ。
ここﾊﾞｰｽﾄｼﾃｨで最も速い男はｵﾚだ。
しかし、ﾋｯﾄﾎﾟｲﾝﾂが限界を迎えたか、血中ｱﾙｺｰﾙ濃度が0.05%を切ったのだろう。中野あたりから次第に失速。足を引き摺るｼﾞﾝｵｳｶﾞのように情けない足取りで命からがら高円寺に辿り着くと、ｵﾚはすぐさま気絶した。
そんなひと春の、自由になれた気がした27の夜を思い出した一本。
