どど丼

FLEE フリーのどど丼のレビュー・感想・評価

FLEE フリー(2021年製作の映画)
4.5
アフガンを亡命した青年が、その苛烈な過去を語るアニメーション×ドキュメンタリー映画。フォーマットが特殊なので、今年の賞レースでアニメ映画賞や国際映画賞、長編ドキュメンタリー賞など色んな部門にノミネートされています。ムスリムを悪と描きがちなハリウッド界隈に真っ向から異を唱えたリズ・アーメッドも制作に名を連ねています。

社会性は勿論、娯楽性にも優れた作品で驚いた。実際の(?)インタビュー音声を軸に話が進むんだけど、彼の匿名性担保のためかインタビュー映像は全てアニメ化。回想パートもほとんどがアニメ映像で、時折実写映像も挟まれる構成。現代の戦争国の厳しすぎる現実が彼の語りからガツガツ伝わってくる。同時に中盤で明かされる驚きの真実は、ストーリーに起伏を生み出すだけでなく世界を取り巻く社会の問題構造を真に訴える上で大きな意味を持っていて、その実態に悲痛な思いを抱かせる。多面的な“マイノリティ”を理由に、善人が嘘をつかなければ生きていけないこの世界に深い憤りを覚えますね……。

彼の祖国たるアフガンは今や彼が亡命した当時の何百倍も悲惨な過去最悪の状況。この作品を観ている間にも人々が殺されているのかと思うと、どうにもならない歯痒さを感じる。出来事を報じるだけで何も救えないマスコミを批判する描写もあったけど、この映画もそうなり得てしまうし、そうならないよう作品を観た一人一人が何か支援できるような行動をとらないといけないですね。
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