戦争下のアフガニスタンから苦難の亡命を経て、コペンハーゲンに辿り着いたあるゲイ男性のドキュメンタリー。本人のプライバシーを守るため、ほぼ全編アニメーションで表現されている。家も家族も一人の人間として生きる権利も奪われ、暴力に晒され続ける難民の生活。心の拠り所に母国を想うも、そこには「同性愛者」という言葉すら存在しない。アイデンティティーをことごとく粉砕され続けた日々によって、生き延びた末ようやく愛し合える人に出会うも本当の自分を打ち明けることができない。その彼が今、真実を語ろうと固く閉ざされた唇を、震わせながらも開くという物語。
プライバシー保護の策としてのアニメーションらしいが、柔らかな描写が優しく心に触れてくれた。温かさも悲しさも憤りも絶望も、真摯に伝えるタッチだった。きっと多くの人が「昔の戦争、」と他人事のように捉えてしまう背景だろう。でも、今を生きる一人の人生をこんなにも破壊している。奪われた幸せを思うと、胸がひどく痛む。
観てよかった、と思えるエンディングです。世界中、いろんな考えの人に観られるといいな。性別も血の繋がりも問わず、愛し合える人に出会えるなんて、それだけで凄いことなんだから。
