せりな

FLEE フリーのせりなのレビュー・感想・評価

FLEE フリー(2021年製作の映画)
3.0
アフガニスタンから逃れるためにある一家の難民としての記録が、20年の時を経て青年から語られるドキュメンタリー作品。
実写映像ではなく、アニメーションという形で表現されており新しい形のドキュメンタリー作品に仕上がっている。
部分的には実写映像を織り込んでいて、経験した出来事の悲惨さがリアルに伝わってくる。

主人公のアミンはまだ子供の時にアフガニスタンを脱出していて、まずロシアに逃げた時、姉たちがスウェーデンに逃れた時、アミンの兄、母がロシアを出ようとした時など、経験したことを丁寧に語ることでアミンの経験したことを追体験するように知ることができる。
密入国を斡旋するブローカーは難民を金儲けの対象としか見ていなこととか過酷な現実が次々と突きつけられる。
20年も話すことができなかった理由を知ると、難民になるという過酷な人生の残酷さが浮かび上がってくる。
この辺りは当事者じゃないと、なかなか想像できない問題だと思う。

アフガニスタンではゲイは存在しないという差別的な現実も同時に描かれていて、アミンが自分の居場所を見つけていく物語としても非常に良くできていました。

この作品は2021年制作だから偶然なんだけど、ロシアに逃げた時にマクドナルドオープンの様子を見ていたり、ウクライナ国際空港を利用していたりしていて、今のロシアのウクライナ侵攻と重なって見えてくる部分もあった。難民が増えている原因でもあるし。
難民の苦労物語として消費するのではなく、難民問題にどう向き合っていくのか個人に問われている作品だと感じた。
せりな

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