たく

FLEE フリーのたくのレビュー・感想・評価

FLEE フリー(2021年製作の映画)
3.8
地味ながらジーンと来た。内戦下のアフガニスタンから脱出したカブールの青年が今まで語らなかった苦しい過去の経緯を告白するドキュメンタリーで、全編アニメにしたのが出演者の身バレを防ぐために良く考えられた手法だと思った。アニメそのものはあまり書き込みのないシンプルな絵だけど、語られる事実の恐ろしさは充分伝わってくる。タイトルの”flee”は脱出という意味。

アミンを脱出させるために自分を犠牲にする次兄が良くできた人で、家族間の強い愛情を感じる。故郷を失った国外脱出者の苦しみと共に、アミンの同性愛という極めてプライベートな問題がのしかかる話が並行して、これが終盤で長兄の理解によって解放されるところが清々しくて感動的。

人が殺されたりする残酷なシーンはないけど、人が理不尽に扱われる心理的に怖い場面がたくさん出てくる。特に密入国のためにコンテナに大人数が押し込まれる場面はトラウマ級の怖さ。あとロシア警察がほんと胸糞悪くて、マクドナルドの楽しいイベントの傍で警察に捕まった移民女性のくだりが恐ろしかった。
アミンが恋人のキャスパーに自分の過去を話してないって言ってたけど、本作の完成までにちゃんと話したのか気になった。回想シーンの最初に“Take On Me”が流れるのが時代を感じさせたね。本作鑑賞後にYoutubeでa-haのミュージックビデオを見たらケン・ラッセルの「アルタード・ステーツ」オマージュが出てきてびっくりした!
たく

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