朝田

FLEE フリーの朝田のレビュー・感想・評価

FLEE フリー(2021年製作の映画)
3.8
ドキュメンタリーをアニメーションで映像化した作品という意味でネットフリックスの「テキサスタワー」を思い出しながら見た。アニメーションという形式の意味は、プライバシーの保護という意味も当然あるがそれ以上にアニメ自体のラフなタッチにあると思う。CGを使った鮮明なアニメーションではなく、手書きの質感と、動きのぎこちなさを残したもので、その線の不安定さが主人公の青年の記憶を美化せずに描き出す。時にはカラーさえ無くなりほぼ下書きの状態のようなタッチへと変わり、抽象的な動きが、より青年の鮮明ではない頭の中の記憶を擬似体験しているように感じさせ、アニメ特有の飛躍を生み出してもいる。実際の映像の使い方も含め一人の青年の心情に様々な手法で誠実に寄り添っている映画だと思った。あまりに苦しいが見る価値はある。
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