このレビューはネタバレを含みます
戦乱のアフガニスタンから逃れロシアで生活し始めたアミン一家。政治も警察も腐ったロシアから命がけで亡命し、家族はバラバラになる。独りデンマークに逃れたアミンは亡命の費用を工面してくれたスウェーデンに住む兄姉や先にロシアから逃してくれた母と兄のためにと必死で働き成功する。アフガニスタンやロシアでは「差別など存在しない。そもそもそんなもの存在しない」とされている同性愛者であるアミンは、デンマークに逃れたことでパートナーと暮らしている。北欧で暮らしていれば、「ゲイだから」という理由で存在を全否定されることはないが、イスラム教徒の家族に見捨てられるかもしれないという恐怖とも戦わなければならない。それにしても環境と言うのは人間の思想に大きな影響を与えるものだと思う。「男らしく」と度々口にしていたスウェーデンに住む兄に自分が女性に興味がないとカミングアウトしたときの兄の反応に涙。LGBTの存在が否定されない国で生活していたことは大きいだろう。アニメの中に時折挟まれるニュース映像が斬新で印象に残る映画だった。今年はアイルランド関連の映画も多いが、ロシアとイスラム教徒とLGBTQを巡る問題を取り上げた作品も多く考えさせられる。（2022/8/10 シアターシエマ）
