このレビューはネタバレを含みます
祖国、家族、性的指向など、自分を形成するためのあらゆる要素を剥ぎ取られ、暴力や差別にさらされる想像を絶する体験。ただ普通に生きることが許されない状況がどれだけ恐ろしいことか。
コンテナ船の貨物に紛れてモノのような扱いを受けたり、過去を偽らなければならなかったりすることは、すべてアイデンティティーを奪われることに他なりません。そうした環境で「自分」を持ち続けることがいかに難しいか。
それでも主人公が「自分」を心の奥底に消さずにいられたのは、ゲイクラブに連れて行ってくれる兄や、彼を待ってくれた恋人の存在、そしてジャン=クロード・ヴァンダム(!)といった助けがあったからだろうと思います。
悲惨な話でありながらも、本当の自分を取り戻す希望の光に救われる気がしました。
