Ginny

FLEE フリーのGinnyのネタバレレビュー・内容・結末

FLEE フリー(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

前情報なしで鑑賞。
『フリーソロ』と誤解していた模様。

胸が大変痛くなる話でした。
「毎週 毎月 毎年と 兄にとってまともな未来への扉が閉じていく」のシーンが一番キツかったです。

映画が始まってすぐ、アニメーション技術は別に高くないな、日本のテレビアニメの技術凄いんだなと思ってしまいました。
動きがぎこちなかったり、顔の影の単調さ、書き込みの少なさなど。
でもこの映画の本分はそこではない。

途中挟まれる実写映像と、インタビュー形式の思い出を振り返る再現の構成がうまく、内容の重さと共に引き込まれていく。
自分が日本で育ち物心ついた時には戦争は第二次世界大戦で終わって世界は平和とぼんやりと感じていたが、成長し外国のことを知る中で戦争がまだ続いていたことを知って驚いた。
ここまで生活に影を落とすことがあったなんて。希望を捨てずに糸が切れずに生き抜いていてすごい。

アニメーションだけでは描ききれない酷さが実写映像の挿入でインパクトとなり伝わる。
淡々と命を奪われる人々が映される映像は衝撃的でしたしレート必要だなと感じました。
エストニアの監禁施設のお手洗いの汚さにも絶望です。

不法入国は、確かに法律違反だけれど、それぞれの背景の中では本当に逃げるしかない場合もあって。直面した国にとって、人道的に同情してもこういうのは一例で終わらないから受け入れるか判断や対応難しいなと。
そもそも何で難民が出るようなことが起きてしまってるのか、だと思うけど中々良くならないどころかアフガニスタン今なお…

一度目のアミンの不法入国の時、雪道をおばあさんが歩けなくなったのとか子供の光る靴とか、私だったら煩わしいと思ってしまうので自分達が苦しい環境下でもアミンや兄や、おばあさんを連れていくのに協力した人たちはよくできた人たちだなと思う。
でも…これはたまたまうまくいったケースで…。アミンの母親もその後無事にヨーロッパに渡れたけど、老いた者が若い者の足を引っ張るのって良くないんじゃと思ってしまうのは、二極化に縛られてるのかな?
見捨てなさい、と老いた側が言うのも愛情と手助けになるんじゃないかと思ってしまう。
いざそれが自分の親なら?自分が老いた時なら?そう思えるか…いや思えない。

下手に考えるより、その時できる限りのことに必死になるのがいいのかな。
アミンを先に出国させた兄、それから自分が出国できるまで何年も、どんな気持ちだったのだろう。体を悪くして年老いた母と共に、隠れて生き続けるのは本当に辛く苦しく先が見えず希望を失いかけただろうに。
兄がどうなったか気になって映画を見ていたのできちんと触れられてて良かった。

長兄は長兄で自分の恋人との幸せより家族のために尽力していて。それも胸が苦しくなる。
アミンの性的嗜好も受け入れてくれて優しいなー。

ラスト、自分の「ふるさと」となる家を見つけられて良かった。
アミンとアミンの家族が今は穏やかに幸せな日々を過ごせていたらいいな。

でも難民問題は、移動して外国で平和に暮らせた一家族がいて良かったでは済まない大きな問題で、何にせよ本当に世界平和が絶対に今まで以上に声を上げて実現に向けていかなきゃいけないと思うけれど。
アフガニスタンの誤った倫理観を直そうとしても絶対に言うこと聞いてくれないだろうし、その国の文化を正義だからと言ってねじ伏せるのは、逆に倫理的にどうなのか?ってならないかな?矛盾?

なんでこうなっちゃったのかな?
最近子育て中虐待しかけた苦しいエピソードをテレビで見ていて、そもそも今の社会で成功する云々の前の人間という生物が命を残していく中で良い子育てって何だったんだ?と疑問に思った。
大人しく席に座っていられるように、周りの大人に怒られないように黙っていられるように、いい学校に入るために、っていうのは今の社会ありきの子育てで、昔々の石器時代とかはどんな子育てだったんだろう。母親がノイローゼになるような感じだったのかな?
人類も文明もテクノロジーも進化して社会が変容していくことで、人間側も何故か振り回されて苦しみ続ける。
解決方法なんてあるのかな?それがない袋小路に、進化と共に人類は向かっているのか?とも思えたり。
Ginny

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