舞台の上だけが、俺たちの自由!
エマニュエル・クールコル監督、カド・メラッド主演による実話をベースとしたフランス製作のドラマ。
囚人のための演技のワークショップ講師として招かれた主人公が、囚人たちとともに刑務所外での公演を実現させていく姿を描く。
物語は、メラッド演じる役者のエチエンヌが、出身地を始め、異なる事情を抱える囚人たちとともに、一歩進んで二歩下がりつつも、着実に前へと進み、刑務所外で公演ができるようになっていく様を中心に展開していくが、まず驚きなのは刑務所のプログラムの一環として、そのようなものがあるということ。
いかんせん、囚人たちが何故そのワークショップに参加しているのか、はたまた彼らがどんな罪を犯してきたのかが殆ど語られないのは、物語としては少々弱いものの、それぞれ個性的なキャラクターが勢揃いしているため、エンタメとして観るには必要十分。
また、撮影はフランスに実在する刑務所の協力のもと行われたとのことであるため、施設の様子は見逃せないポイント。
残念ながら、囚人たちが劇中劇として演じる『ゴドーを待ちながら』は初耳であったことから、今ひとつ、彼らがそれを演じることの意味合いがわからなかった反面、ベースとなった実話の内容も知らなかったため、本作品の結末は、衝撃とともに、まあそうなるよね、と言うのが正直な感想。
原題の直訳が『勝利』であるように、観終わった時、勝利したのは誰かが問われ、悲劇とも喜劇とも言える展開に目が離せない一作。
人生は、ここじゃなく外にある。