カポERROR

アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台のカポERRORのレビュー・感想・評価

3.9
【事実は小説よりも
 additionally revolutionary & 奇なり~】

Bravo!
Bravo!
Bravo!

これでもかと言うほどネタバレ満載の日本版ポスター…相変わらずこの手のプロモーションのスタンスには、大いにツッコミを入れたくもなるのだが…とは言え本作、事実ラスト18分で…
 「うそーーーーーーーん(꒪0꒪ノ)ノ彡」
…となるのだから、フライヤーのコピーは偽りではない。
驚くべきは、このフランス産ヒューマンドラマが、80年代のスウェーデンで起きた実話を題材にしている点である。
あらすじは以下の通り。

刑務所の囚人たちのために演技のワークショップ講師として招かれた落ち目俳優のエチエンヌ。
彼はサミュエル・ベケットの戯曲『ゴドーを待ちながら』を演目に決め、癖ありの囚人たちに演劇の指導を行うこととなる。
常に思いもよらぬ行動ばかりとる囚人たちに、終始翻弄されるエチエンヌ。
しかし、彼の情熱は次第に囚人たち、刑務所の管理者たちの心を動かすこととなり、タブーだった刑務所外での公演にこぎつける。
やがて、彼らの芝居はメディアから予想外の高評価を受け、再演に次ぐ再演を重ね、遂にはあの大劇場、パリ・オデオン座から最終公演のオファーが届くのだった。
果たして彼らの最終公演は観衆の歓喜の拍手の中で、感動のフィナーレを迎えることができるのだろうか。

はい、ここまで。

本作、実話ベースの作品なので、どんでん返し系のような二転三転の展開や伏線回収等の仕掛けは一切ないのだが、公式が公言するように、驚きのラストが待ち受けているためネタバレは厳禁である。
未見の方は、是非これ以上の事前情報は入れずに御鑑賞頂きたい。

尚、本作の素晴らしい点は、衝撃ラストものにも関わらず、何度リピート鑑賞しても、味わい深い感動を得られる点に他ならない。
本作が”驚愕のラスト”なるギミックに主眼を置いていないことの表れと言えよう。
そう、これはまさに人生讃歌なのだ。

ちなみに、鑑賞後気になって調べてみたのだが、北欧にある刑務所は、その多くが到底刑務所とは思えないほど人道的且つ開放的な快適空間で驚いた。
(私の部屋より余程快適そうなのが実に腹立たしい。)
「罪を犯した者はそれ相応の報いを受ける」というのが日本人の感覚だが、北欧では、犯罪者が罪を犯すに至った社会的な背景や家庭環境などを理解し、「誰が罪を犯してもおかしくない」「自分も犯罪者も同じ人間に過ぎない」と考える文化が根付いているそうだ。
まさに罪を憎んで人を憎まず。
何となく、本作のバックボーンが見えるではないか。
本作を観て、「ゆる過ぎっ!」と思ったそこの貴方。(当然私もそう思った。)
確かにそうかもしれないのだが、人道的な精神や対応は、北欧の犯罪者たちにとっては適切と言えるのかもしれない。
何せ調べによると、アメリカの犯罪者の再犯率が67.5%、日本の一般刑法犯による再犯率が43.8%、本作の題材となったスウェーデンの犯罪者の再犯率が…実に41%なのである。
うーん、刑罰のあり方ってムツカシイʅ( ・᷄-・᷅ )ʃ

さて、本作で描かれたような囚人演劇。
今現在でもヨーロッパでは行われているとのこと。
ガラガラ声でがなり立てる発声、女性役を演じるむさ苦しい男性…事情を知らずに鑑賞すると「なんじゃこりゃ」となるらしいが、最後は決まってスタンディングオベーションに包まれるらしい。
なかなか興味深いヨーロッパの文化じゃないか。

未見の方は、本作『アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台』を是非御鑑賞頂きたい。
現在、U-NEXTで見放題配信中。
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