TrueRy

スパイの妻のTrueRyのレビュー・感想・評価

スパイの妻(2020年製作の映画)
3.9
戦時中の日本、満洲で得た情報と体験から、正義をなそうとする優作(高橋一生)と、その夫とともに生きる事を選択した聡子(蒼井優)の葛藤と、そして夫婦間の絆を描く作品。

決して多くを語らず、舞台背景とやりとりから時代の流れが伝わってくるのは、脚本と、出演俳優たちの素晴らしさからか。

冒頭、夫の事を信じられない聡子が言葉だけではなく行動を始める事から展開が動き出す。その行動に呼応するように満洲で起きた事を語る夫。その衝撃の中、自分に出来る事を考えた末に、聡子は自らが進むべき道と取るべき行動を決意した。

この作品は上質なサスペンス、と言っていいだろう。単なるスパイ物としてだけでなく、静かなどんでん返しとしても素晴らしい。それを際立たせているのが聡子役、蒼井優の表情の豊かさと、揺れ動く彼女の心情を的確に表現しているのが大きい。

高橋一生は最近、岸辺露伴のイメージが強く、観るのが難しかったが、彼のとらえどころの無さ、が素晴らしくマッチしている、とも。

見えているものが全てではない、という意味で正しいスパイ映画であり、サスペンスとなっている。
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