Kaito

スパイの妻のKaitoのレビュー・感想・評価

スパイの妻(2020年製作の映画)
4.0
U-NEXTにて見放題作品として配信されていたため、鑑賞。黒沢清監督作品第17弾。1940年、福原聡子(演:蒼井優)は夫の優作(演:高橋一生)とともに何不自由なく暮らしていた。国家総動員法の下、貿易商という職業柄当局から目を付けられていた。ある日優作は満州に出かけ、予定より遅くに帰国した。そのことを聡子は訝しんでいた。優作は満州で日本軍が行っていた人体実験について知りそれを暴露しようとしていたのである。聡子は愛から優作の行動を止めようとするが彼は正義のためといって聞かない。しかしその画策は一部が露呈してしまい、夫妻は危機に陥る。しかし彼女は優作への愛ゆえにスパイの妻と罵られることを恐れず行動してゆくという話。黒沢清監督が初めて描く歴史作品。舞台は第二次世界大戦直前の日本。時代背景を損なわずに丁寧に描かれている。この時代は何が本当のことか分からない。当局は自らに不利益な情報は隠す。人はおろか国家も安易に信用することはできない。そんな中国家に立ち向かう優作という男。妻の聡子は最初は止めるがやがて覚悟を決めともに立ち向かう。国を大事に思っていたからこそ行動できたのではないかと思う。聡子は収容され、優作の居場所も分からない。そんな中で日本の敗戦を知り慟哭する。映像にどことなくNHK味を感じるなと思っていたらエンドロールにNHKの文字が出てきてやはりなと思った。大きく言うとこの作品は夫婦の愛と嘘が交錯する話。優作は何を考えているのか読めないような不気味さもある。彼がしたのは裏切りか、それとも救いか。聡子は利用されていたのか。最後に聡子はアメリカに渡ったと記述されていたがその後どうなったのかということは非常に気になる。恐怖さえも抱くような強烈な愛。何が、誰が正気なのかも分からない時代を愛というものを信じることにより生きた夫婦。本当に狂っているのは誰なのでしょうか…
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