このレビューはネタバレを含みます
悪が正義になったとき、狂っているのはどちらの方か。
黒沢清 × 濱口竜介
師弟関係にして最高のタッグ。
"恥ずかしい"演出も演技もない。
邦画を見るときに苦痛に感じる恥ずかしい演技を見ずにすむことの素晴らしさ。
淡々とした流れに締まる緊張感、日常に潜むホラー演出(清節)がたまらなかった。
安易な言葉でなく「映画(映像)」で伝わる聡子への愛情に心打たれた。
どこか不安定な時代を表象しつつ、それと対比するように確固たる想いが克明に描かれる。
「スパイの妻」という題もかなり意識的で、"スパイ"と捉えているのは国から見た印に過ぎない。
"私は一切、狂ってはおりません。ただ、それがつまり私が狂っているということなんです。きっとこの国では。"