TK

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースのTKのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

創作物に対する自らのエゴを改めさせられるような内容だった。
ノーウェイホームを観た時、メイおばさんを失った事でMCUのスパイダーマンはやっとスパイダーマンになる事が出来たと思っていたが、そういう思想こそが今回の主要な問題提起であり、スパイダーマンの敵だ。
主要ヴィランとして登場するのはスポット。
マイルスモラレスというスパイダーマンが現れたきっかけであると同時に、マイルスが現れたことでヴィランになったとあう常に相互に干渉し合う宿敵。この設定は面白いしヴィランにも興味を持つことができてとても良かった。
物語としての主要なテーマはヴィランとの戦いではなく、スパイダーマンとは何か、そしてスパイダーマンとしての運命に抗おうとすること。
まさに視聴者でありファンである我々と同じように、スパイダーマンに課せられた運命を全うすること、そのエゴのために救えるはずの命を見殺しにする行為そのものが今回の敵として描かれた。
2時間半の上映時間にたっぷりとさまざまな視点の物語が描かれており、グウェンと2099の出会い、スポットとマイルスの戦いと因縁、マイルスとグウェンの再会、スパイダーソサエティへの訪問、(少なくとも今作における)スパイダーマンの運命と真実、ソサエティからの脱出。
そして、マイルスを探すグウェンともう1人のマイルスと出会うマイルスの二つの物語が同時に進行する。
見応えたっぷりで飽きがこないのが素晴らしい。
あえて問題点を挙げるとすれば今作で完結しない事。
それでも続きが気になる展開や、予告編あら予想していたような仲違いが起きないのは嬉しかった。
成長したペニーは勿論、それぞれの世界の新しい仲間達が集結するラストシーンには感動を抑えきれなかった。
反骨精神が強くグウェンとマイルスに共感を示していたパンク、マイルスに助けられたインディア(?)、元の世界に帰ろうとしたマイルスを止めなかったアバターの子、そして前作の仲間達。ノワールとハムとペニーの再会を楽しみにしていたので、これをやってくれて一安心。次回作が待ちきれない。
個人的には元々パンクと今回は2099の仲間として登場したベン(スカーレットスパイダー)が大好きなので、好きなスパイダーマンが見られたのも良かった。
大事なのはストーリーだが、前述の通りスポットの存在理由と2099たちによって明かされたスパイダーマンの運命とそれに争う物語が素晴らしい。
家族との複雑な関係や心情描写も、時々見ていて居た堪れなくなる感じも含めて若さを感じて応援したくなる。
ひと足先に家族問題を解決したグウェンが、母親に自らの正体を伝えるマイルスを側から見守る展開かと思いきや……という最後の一連のシーンは最高だったと思う。
初見は吹替だったので、字幕版で2度目も観たいと思った。
一作目と違い前提も終わり方も今作だけで完結しないのが心残りではあるが、シリーズ物の作品にしか出来ないことをふんだんに盛り込み、スパイダーバースだけではく「スパイダーマン」の名を冠したありとあらゆる作品が関わるのは見応えがある。
TK

TK