このレビューはネタバレを含みます
既に飽和状態なマルチバースものの多くは多次元世界を描く事によって、「救われる物語」だった。
一方、今作の特徴は逆にマルチバースが原因で「救われない」運命を見せつけられる。
本来存在しない筈のスパイダーマン(マイルス)が居るせいでイレギュラーが起こり、署長になろうとしてる父親の死の運命、そしてそれを受け入れる事が正しい宿命と語るミゲルに反発した所で危機に陥る物語は前作が徹頭徹尾「スパイダーマンらしさ」に集中したその先を行くが如く、新しい物語に向かおうとするシチュエーションが面白かった。
3部作の真ん中である以上、どうやっても「繋ぎ」特有の中弛みもある程度は否定出来ないものの、今作のスイング多めのアクションと多彩な視覚効果は前作以上のクオリティ。
グウェンのストーリーに始まり、グウェンのアップで終わっていく今作はそれまでのスパイダーマン映画には存在しない「ヒーローとしての彼女」が文字通り一筋の光、希望の象徴である事を雄弁に物語っていると思う。
イースターエッグとしてアンドリューやトビーのカメオ出演カット、そして多分「俺でなきゃ聴き逃しちゃうね」案件だがNWHドック・オクの「Hello,Peter.」があったり、ヴェノムネタ、ホームカミングのアーロンおじさんネタなど、細かい場面でフフッとさせる所も、過不足なく楽しませてくれる映画だった。