おいなり

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースのおいなりのレビュー・感想・評価

4.2
ああーーースパイダーバース!!!
超がつく名作だった前作を、あらゆる面で軽々と超えていく傑作がまた生まれてしまった。

なにせ今回のテーマは「運命に抗う」!
これまで喪失を運命として受け入れてきたスパイダーマンが、ついにそれをぶち壊すというのだから、これ以上にエモいことはない。
誰もが「それがスパイダーマンのさだめだから」となんとなく他人事で納得していた常識に、真正面からパンチする。

自分の運命は自分で作る、というのは創作の世界では常套句ではあるけど、多くの場合それは「運命を受け入れる」ことと同義で扱われているように思う。もし運命が自分の思うままであれば、それは他者を顧みないということであり、すなわちヴィラン側の思想に近い(本作がある部分で『反転』しているのもその表れのような気がする)。

だからこそ、悲劇的な運命であろうとも受け入れる強さと、それを自分の足で乗り越える意思がこれまで「スパイダーマンの証」として繰り返し描かれてきたわけで。
ピーター・パーカーがベンおじさんやグウェンを失ったり、世界中の全てから忘れられたりする運命を受け入れて前に進む姿に、これまで観客は感動と勇気をもらってきた。

運命を変えるという行いは、MCUではインカージョンという形で封じられてきた。ヒーロー映画を追っているものならよく知っているように、What ifでシニスター・ストレンジが引き起こした崩壊や、奇しくも日本で同日公開のDCフラッシュが過去を変えるという形で世界を危機に陥れたり、ヒーローはその正義感だけでなく、「物理的にやってはいけないこと」として運命に縛りつけられてきた。

それに真っ向から喧嘩売ろうって言うんですよ本作は。

このヒーロー映画飽和時代に、周りよりワンステップ高いところを目指す。それは必然でもあるが、最も困難な挑戦でもある。
本当にそれができるのか、超えていけるのかは、続編である、そう、「ビヨンド」ザ・スパイダーバースを待たなければならない。
これはスパイダーマンへの、そして全てのヒーロー映画への挑戦ですよ。座して待て。



前作の時点で完成度の高かった映像表現は、さらに磨きがかかっている。もうほんと「絵が動いてる」としか表現しようがないんだけど、こんなことが出来るの?どうやってるの???としか言えない、いろんな作風のキャラクターが一堂に介する様子は、見てるとだんだん脳がバグってくるようだった。
二次元的な表現と三次元的な処理が違和感なく融合していて、これはハッキリいってアニメの完成系の一端を観たような感覚に陥った。
というか、前作の時点では「すごいアニメ」だったのが、今作で「すごいなにか」に変わったというか、ところどころでまったく新しいものを見せられているような、そんな気分になる。



新キャラでは文句なしにスパイダーパンク推し。最高だよアンタ。ぜんぜんイロモノじゃない、最高のスパイダーマンの一人。
とにかく山ほどスパイダーマンが出てくるので、正直どれが誰とかまったく理解出来てないけど、ところどころで「うわっ」「おおー」と思わされる部分があって、楽しかった。プレステみたいなポリゴンのスパイダーマン可愛かったね。

MCUやSSUとの繋がりを匂わせる要素も山ほど詰め込まれていて、今後このユニバース(というか、マルチバースそのものというか)はどうなってしまうのか。
正真正銘のクリフハンガーなので、続編が出るまで本作単体で評価するのが難しいんだけど、とにかくあらゆる要素が最高値を更新、すでにマイベストムービーの一覧に手をかけているくらいの満足感。
一刻も早く続編が観たい。果たしてマイルズは全てを救い運命をぶっ潰せるのか。果たしてMCUとのクロスオーバーはどうなるのか。果たして東映版スパイダーマンは登場するのか。楽しみ。
おいなり

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