シシオリシンシ

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースのシシオリシンシのレビュー・感想・評価

4.1
本作は何より映像が美しすぎる。
グラフィックノベルのアニメ化として前作以上の芸術性とクオリティ。
風景やアクション、注釈にオノマトペ、それぞれのアースの描き分け、キャラクターの心情描写でさえも絵と色彩で語る映画になっており、未知の映像体験に圧倒された。
これらの絵が見せる色彩豊かなイメージを見せられるだけで不思議と口角が上がってしまう。まさに観客の五感に多幸感を訴えかけるサブリミナルムービーである。この点は諸手を上げて素晴らしいと言えるだろう。

アクション全体の躍動感や膨大な数のスパイダーマンたちのチェイスシーンは未知の楽しさが溢れる映像でワクワクしっぱなし。
こういう斬新でフレッシュなシーンが観まくれるだけでも映画代以上の価値がある。

マルチバースの見せ方もアニメだから出来る奥の手に満ちており、MCUのバースやアメスパのバースとも繋がってるシーンを実写で見せてきたのはファンならば唸る嬉しいポイントだった。

ストーリーに関してはマイルスとグウェンをW主人公にし彼らそれぞれの親子関係にフォーカスして心情に寄り添った作りになっている。
ここは個人的にはマイルスの親子ドラマがなかなかしんどいというか(感情移入させるドラマとして良くできてる証拠でもある)、過保護な親が子にベタベタするのがそんなに好みではないので、ここはウェットな脚本を少し抑え気味にしてほしかったところ。(台詞で言わなくても絵で十分伝わると思うので)
グウェンの親子ドラマやBパーカーの親としての視点は好きなポイントだったので、脚本に関しては私の好みの問題と言い添えておきたい。

あとは単純に尺が長い。
長いわりに終わりに向かってのカタルシスが不足した終わり方になっているので、見終わったあとは満足感より疲労感が勝ってしまった。ぶつ切りで終わるのなら90分~2時間でまとめた方が潔いと思える。

とはいえ後編たるビヨンド・ザ・スパイダーバースがどうなるかによって本作の評価も変わってくると思うので、きたるべき完結に向けて期待を膨らませて待っていたい。
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