悪魔の毒々クチビル

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

4.4
全ての悲劇は繋がっている

スパイダーマン(マイルス)が運命に抗うお話。


前作が近場の劇場だと吹き替え版しか上映していなくて結局配信されてから観たんだけど、今回は前作の反響もあってか字幕版も一緒に上映する劇場が増えて何よりです。

その前作はアメコミ式の作画とスタイリッシュなアクションが上手く融合したかなり良い出来でしたが、今作ではより画に制限が無くなった気がしますね。何なら実写も混ぜて来ていたし。
別世界同士のスパイダーマンの作画が千差万別ってだけでなく、キャラクターのエモーショナルな場面で背景を淡い水彩画風にしてみたりと実写で出来ない表現をより手間隙掛けて製作していました。1の復習していなかったけど、多分前作よりもそこの幅は広がっていると思います。

一応コミック版の「スパイダーバース」(本編のみ)と続編の「スパイダーゲドン」(これまた本編のみ)、あと現在ディズニー+で配信中のアニメ「アルティメット・スパイダーマン」のスパイダーバース回なんかはチェックしていたので今回登場する多次元のスパイダーマンはちょいちょい見覚えのあるキャラがいて楽しめました。
俺としてはコミック版でもマイルスと即席コンビを組んでいた「アルティメット・スパイダーマン」版のピーターとかね、出てきて欲しかったかな。このアニメ、結構ピーターがコミカルかつデップーらしいメタ的なキャラ付けされていて面白いのでオススメです。
そう言えばPS4版のスパイダーマンも居ましたね。
スカーレットスパイダーはあんな脳筋キャラな扱いで良かったのだろうか。
今回も出番無かったシルクは…好きなんだけど主人公格のピーター抜きだと掘り下げ辛いし、映像作品だとそこまで世間に浸透している印象もないからガッツリ登場は無理か。

元々2時間超えの内容なのを分かった上で観ても体感3時間くらいあるんじゃないかってくらい色々詰め込まれていて、そこは俺は苦では無かったけどそこまでスパイダーマンの世界観に興味が無い人からしたらしんどいかもしれません。
今回はグウェンとマイルスのW主人公って感じで、オープニングはグウェンの世界の様子、その後マイルスの世界、そして再会する二人、で漸くスパイダーマン2099率いる部隊と合流と来年続編を控えているとは言え大分じっくり進みます。
ただ各々のチャプター自体はちゃんと見応えがあって面白いのは流石でしたね。
スパイダーマンらしいお喋りなバトル然り団結して戦う場面然り、これでもかと言うくらい「らしさ」に溢れていて超楽しかったです。
あとグウェンってレギュラーグリップでドラム叩いていたのね。かっけぇ。

運命に抗おうとするマイルスを阻止しようとするスパイダーマン2099ことミゲル・オハラも、彼なりにしっかりとした理由があるからどちらにも共感出来る流れになっていて良い意味でどちらかを応援しようとする気もなくシンプルに成り行きを見届けたくなりました。
でも終わり方はあまり好きではなくて。
そこで区切ると結局壮大な内輪揉め2部作になってしまいそうな気がするしで、どうにも中途半端な幕切れだったんですよね。
だったらせめて運命に抗った結果、実際に何が引き起こされる事になったのか提示してから終わって欲しかったかな。
次回が完結作なのかは分かりませんがそこでそんなに引き延ばすとは思わなかったので、ここは個人的にマイナスでした。
この前のワイスピも区切り方イマイチでしたし、そう考えると「インフィニティ・ウォー」って丁度良い終わり方だったんだなと改めて思いました。

ヒーロー同士の思想で対立する展開もあるあるではありますが、やはりファンとしてはコミックであった大勢のスパイダーマンが団結して戦うシーンをアニメで観たかったので、最終的にはこのシリーズでもインヘリターズみたいな強敵が現れて欲しいなぁと。

何か声優陣にオスカー・アイザック、ヘイリー・スタインフェルド、ダニエル・カルーヤ、マハーシャラ・アリ、ブライアン・タイリー・ヘンリー等々マーベル俳優がドン被りしていましたね。
JJJの声多分あの人だろうなと思いましたが、当たりでした。

そこで終わりか~。と残念な気持ちはあれど、相変わらずノリの良い自由奔放なスタイルに嵌まる良いアニメ映画だったと思います。
次回こそはコミック版で「最も強力な味方」と評されていた日本版スパイダーマッ!も登場させてくれよな!!!