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スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースのRitOのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

革新的な映像を作り出した前作を、前作以上に多種多様なアートスタイルを、一つの作品の中で、あるいは一つの画面の中でミックスさせることで超えようとしてきているのが本作。

個人的に素晴らしいと感じたのは、三点。
一点目は、冒頭のグウェンとスパイダーウーマンが切り替わりながら、彼女の過去が語られるシーン。色彩だけが浮かび上がった抽象的な背景と、フォトリアルな背景が描かれることで、彼女の心情の揺れ動きにこちらがシンクロするように感じた。
二点目は、回想後の、西洋画調のバルチャーと前作まで描かれたような3Dアニメーションのキャラクターが、一つの画面の中で戦うアクションシーン。明らかに違う作風のキャラクター同士のアクションを成立させていて、純粋にクオリティに圧倒される。このアクション後に、すぐ父親と対面する展開が畳み掛けられるのも個人的はかなり好き。
三点目は、クライマックスのマイルスが大量のスパイダーマンに追跡されるシーン。とにかく画面の情報量が多く、何度観ても観たりない映像に仕上がっている。

物語的には、前作以上に「自分で選択すること」というテーマが打ち出されており、それでいて、前作の「運命を受け入れる」とは真反対の選択になっている点も面白い。
また、スポットが前作におけるマイルスの立場になっており、「与えられた力を受け入れる」という選択をしたことにより成長するという構図になっているのも面白く、自分もまんまと脇役だろうな、と考えてしまった。
マイルスとグウェンの関係も印象的で、逆さまになりながら二人きりで会話をするシーンが特に心に残っている。この二人がどのような結末を迎えるのかが非常に気になる。

序盤のグウェンのシークエンスがアクションとドラマの両面でかなり良かっただけに、マイルスがグウェンと出会うまでは感情の起伏的に少し物足りないな、という点や、前作のようなクスッと笑えるシーンがあまりない点、マイルスと親子の関係性が前作から後退してしまった点など、個人的に気になる部分もある。だが全体としては二部作の前編として素晴らしく、続きをすぐにでも観たいと感じさせてくれる作品だった。
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